千賀さんから大石さんが亡くなったとの報を聞いた。
大石さんとは30数年の付き合いだったがあまり良い関係とは
云えなかった。
彼は北見出身で東京のシナリオ作家協会で仕事をしていて有る
理由で仙台に来た。
彼は5回結婚したという恋多き男だ。
仕事柄か芸能界に顔が広い人だった。
大島渚や小津安二郎等の監督や浅川マキや当店でも数回コンサート
をしたあがた森魚等歌手や評論家等と幅広い面識が有った。
彼と知り合ったのは国分町の「のあ座?」という仙台には稀な新宿の
ゴールデン街を思わせるスナックだった。
その店に行くと必ず彼が居た。
その後店はいろは横丁に移転したが変わらず彼は必ず居た。
彼は普段は穏やかだが何かスイッチが入ると激情男に変身する。
有る時いろはの店で飲んでいたら激情女が入って来て今から
国分町のクラブに殴り込みをするから貴方も一緒に来てと懇願
された。
何でも彼女の彼はその店のマネージャーをやっていて最近連れなくて
電話にも出ないので腹が立って今から殴り込みをするという。
酔った勢いでけしかけていたらアンタも来てとなっている所に大石さんが登場。
そして劇作家や裁判の話などで彼女と大石さんの意見が分かれ互いにヒートアップ
して「外に出ろ」となり揉み合いの喧嘩になった。
其の頃のいろは横丁は日曜を開けている店は少なく二人で揉み合ったり閉じている
店のシャッターにぶつかったりと大騒動になりパトカーまでが出動する騒ぎになった。
この事件を僕は「激情男対激情女の対決」と称し皆に話している。
この顛末とその時僕はどの様に振舞ったのかは一切記憶に無い。
昭和の熱い時代の話だ。